2025年6月
夜鳴きや徘徊、トイレの失敗、性格の変化など、若い頃とは違う愛犬や愛猫の様子に、不安を感じる方も少なくありません。
「どう接したらいいのか分からない」「これが病気なのか心配」という声もよく耳にします。
当院では、こうしたお悩みにも丁寧に対応しておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。
そこで今回は、犬や猫の認知症について、知っておきたいポイントをわかりやすくご紹介していきます。
認知症は、正式には「認知機能不全症候群」と呼ばれます。
高齢になるにつれて認知機能が徐々に低下し、いくつかの特徴的な行動の変化が現れます。
犬の認知症では、人のアルツハイマー病の原因とされるアミロイドβというたんぱく質が、脳に蓄積することが知られています。
ただし、アルツハイマー病に特徴的な病変のうち、犬では一部しか見られないため、詳しい原因はまだはっきりわかっていません。
一度、脳の細胞に変化が起きると基本的に元に戻すことはできません。そのため、認知症に対しては早期発見と進行予防がとても重要になります。
認知症では、いくつかの特徴的な症状が現れます。日ごろから愛犬や愛猫の様子を観察し、早めに気づくことが大切です。
日中に眠っている時間が長くなり、夜間に覚醒して徘徊したり、夜鳴きをしたりする昼夜逆転が見られます。
トイレ以外の場所で排尿することが増え、尿漏れや失禁をしてしまうこともあります。
飼い主様の呼びかけや、周囲の物音に対する反応が鈍くなります。
また、触られると怒るなど、性格の変化が起こることもあります。
同じ場所をぐるぐる歩き回る、いわゆる旋回運動が見られることがあります。
一定のリズムで大きな声で鳴き続ける、夜間に夜鳴きをするといった変化が目立つようになります。
認知症に似た症状でも、実際にはほかの病気が原因となっている場合もあります。
例えば、以下のような病気が挙げられます。
このような変化に気づいたときは、できるだけ早めに動物病院へご相談ください。
特に、ご自宅での愛犬や愛猫の行動の変化は、診断の重要な手がかりとなるため、まずは飼い主様から詳しくお話を伺うことから始めます。
問診の後には、必要に応じて血液検査やレントゲン検査、超音波検査などを行い、ほかの病気が隠れていないかをしっかり調べていきます。
犬の認知症では、いくつかの特徴的な変化が見られます。
中でも注目されているのが、「DISHAA」と呼ばれる6つの認知評価基準です。これは、認知機能の低下が現れやすい行動をもとに構成されています。
この6つの徴候を通して、愛犬の今の状態を把握することができます。
下記のリンクでは、「DISHAAチェックシート」を使って、愛犬の認知機能の状態を簡単に確認できます。
残念ながら、犬や猫の認知症には根本的な治療法はありません。
そのため、進行をできるだけ遅らせるために、日常的な対策を取り入れていくことが大切です。
知育玩具を使って遊んだり、初めての場所へお散歩に行ったりすることで、日常生活の中に新しい刺激を取り入れましょう。
脳に適度な刺激を与えることが、認知機能の維持につながります。
毎日規則正しい生活を送ることは、脳の活性化に役立つだけでなく、昼夜逆転の予防にもなります。
天気の良い日には、お散歩や日光浴を取り入れて、体内時計を整えてあげましょう。
適度な運動やバランスの取れた食事も、脳への刺激となり、夜ぐっすり眠る助けになります。
無理のない範囲でお散歩をしたり、手足をやさしくマッサージしてあげたりするとよいでしょう。
最近では、オメガ3不飽和脂肪酸(EPAやDHA)やオメガ6不飽和脂肪酸(リノール酸、アラキドン酸)を含むサプリメントによって認知症の症状をサポートする可能性があるとして注目されています。
また、MCT(中鎖脂肪酸)の摂取も効果的であるという研究結果があり、MCTや抗酸化成分を含む療法食を活用することもあります。
さらに、当院では以下のような植物由来の成分を配合したサプリメントも取り扱っています。
・サラファクト:ジャワしょうがから抽出されたエキスに含まれる、希少な成分「バングレン」が配合されています。
・グネトロン:メリンジョの種子から抽出されたエキスに含まれる「グネチンC」という抗酸化成分が含まれています。
これらの成分については、いずれも複数の論文で研究成果が報告されています。ただし、愛犬の体質や症状によって合う・合わないがありますので、使用をご検討の際は、必ずかかりつけの獣医師にご相談ください。
残念ながら、犬や猫の認知症には根本的な治療法はありません。
そのため、進行をできるだけ遅らせるために、日常的な対策を取り入れていくことが大切です。
若い頃との違いに戸惑うこともあるかもしれませんが、今できることに目を向けて過ごすことが大切です。
また、認知症になると視力や聴力が弱くなることも多いため、スキンシップを多めに取ることで安心感を与えてあげましょう。
愛犬や愛猫が安心して暮らせるよう、食事やトイレの場所を変えないようにし、段差をなくす、滑り止めマットを敷く、壁の角にクッションをつける、サークルで囲うなどの工夫を取り入れましょう。
認知機能や視力の低下をやさしくサポートすることが大切です。
朝起きる時間、散歩、食事、スキンシップなど、ルーティンを維持することで、愛犬や愛猫の不安を和らげ、昼夜逆転の予防にもつながります。
寝ている時間が長くなると床ずれを起こしやすくなるため、こまめに体勢を変えてあげることが必要です。
ハーネスやクッションなどの介護グッズを活用することで、飼い主様の負担も軽減できます。
また、24時間の介護を一人で抱え込むのは非常に大変なため、家族全員で協力できる体制を整え、無理のない介護を続けられるよう心がけましょう。
認知症は、早期発見と早期対応がとても大切です。
定期的な健康診断を受け、獣医師と相談しながら、早い段階から生活環境を整えていきましょう。
当院では、飼い主様とのコミュニケーションを大切にしながら、愛犬や愛猫に寄り添った診察を心がけています。
少しでも気になることがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
神奈川県相模原市を中心に大切なご家族の診療を行う
かやま動物病院