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老犬のせきの症状で疑うべき病気、
僧帽弁閉鎖不全症について

2023年10月

咳

犬にせきの症状が見られた時に、飼い主様が真っ先に思い浮かべるのは風邪など呼吸器系の病気ですね。しかし、僧帽弁閉鎖不全症という心臓の病気の場合でもせきをします。

僧帽弁閉鎖不全症は犬の心臓病で最も多く、また死亡原因の上位を占める疾患です。

今回は、高齢の犬に多い僧帽弁閉鎖不全症について、原因や症状、治療方法などをお伝えします。

僧帽弁閉鎖不全症の原因

心臓は、右心房、右心室、左心房、左心室という4つの部屋から成り立ちます。全身で使われた血液は右心房に入り、右心室を経由して肺に流れます。肺で酸素をたくさん取り込んだ新鮮な血液は左心房に取り込まれ、左心室を経由して全身に流れます。

僧帽弁は、左心房と左心室の間にある弁のことです。この弁により血液は逆流することなく、左心房から左心室、そして全身へと一方通行で流れます。

僧帽弁閉鎖不全症は、この弁に異常が出て血液が逆流してしまうことで起こる病気です。

 

僧帽弁閉鎖不全症は中高齢以降の小型犬に発症しやすく、一度発症すると徐々に悪化する傾向があります

特にマルチーズやポメラニアン、チワワなどの小型犬に多くみられ、原因は不明ですが遺伝的要因も考えられています。キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルは遺伝的に罹患しやすいことが知られています。

僧帽弁閉鎖不全症の症状とは?

僧帽弁閉鎖不全症は初期ではほとんど症状がありません病気が進行するとせきの症状が特徴的に現れます。せきは、特に興奮した時や運動時、食事の時などに目立つ傾向があります。僧帽弁閉鎖不全症が悪化することで心肥大や心拡大をおこし、近くにある気管が物理的に圧迫され、気管の通り道が細くなってしまうことでせきが出ます。

また、散歩中にすぐに座り込んでしまったり、走ったあとに倒れたりするなどの「運動不耐」も一般的な症状です。さらに進行すると心臓に戻ってくる血液を受け入れにくくなるので肺に水が溜まる「肺水腫」となり、呼吸困難が起こることもあります。

  • せきをする(発咳)
  • 呼吸が速い(呼吸促迫)
  • 運動をしたがらない(運動不耐性)
  • 倒れる(失神・虚脱)
  • お腹が膨れている、張っている(腹部膨満) 
  • むくみ
  • チアノーゼ
  • 喀血

このような症状があれば心臓病を強く疑います。

診断方法と治療方法

僧帽弁閉鎖不全症の診断は、聴診にて心雑音の有無やグレードを評価し、レントゲンやエコー検査などの画像診断で行います。

また、血液検査で心臓バイオマーカーの測定を行うこともあります。

「せきをする」と来院されても心臓病では無く呼吸器疾患である事も少なくありません。

 

治療は多くの場合、強心剤や血管拡張薬、利尿剤などを組み合わせた内科的な治療を行います。初期の段階で投薬をはじめれば、長期に渡って生活の質を落とすことなく過ごすことが可能でしょう

ステージ分類をして治療を開始して良いというステージからの投薬になります。そのためには前述の検査を的確に定期的に行う必要があります。

そして投薬治療は基本的に、原因である弁そのものを修復する作用はないため、いかに血液をうまく循環させるかという治療になります。

 

また、場合によっては心臓の手術を行うことで完治を目指すこともあります。手術は専門の獣医師チームによって行われることが一般的ですので、希望する場合にはかかりつけの獣医師とよく相談してみましょう。

 

予防法と飼い主様が気を付けるべき点

僧帽弁閉鎖不全症の確実な予防法はありません。ただし、心臓に負担をかけないように肥満にならないようにすることは大切です。心肺機能を落とさないように適切な運動も大事です。

また、中高齢以降の小型犬では特に多い病気なので、定期的な健康診断で早期発見を心がけましょう。症状が出るよりも前に、混合ワクチン等定期受診での聴診により心雑音が聴取されることで、早期診断されるケースも多いです。

 

僧帽弁閉鎖不全症が見つかった場合は、心拍数や呼吸数の変化には気をつけてあげましょう。

また、飼い主様は以下のことにも注意してあげてください。

  • ストレス、興奮は避ける
  • 肥満や過度なダイエット
  • 塩分の取り過ぎ
  • 温度、寒暖差
  • 食餌
  • 水分

中高齢以降の犬のせきには心臓の病気が潜んでいる可能性があります。

たかがせきだと思わずに、すぐに動物病院を受診することで、早期発見早期治療につなげましょう。

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