2025年2月
ワクチン接種は、愛犬の健康を守るために欠かせないケアのひとつです。犬は私たちと同じように、感染症にかかるリスクがありますが、適切なタイミングでワクチンを接種することで、その多くを予防することができます。
感染症を防ぐために、ワクチンはとても強力な手段となりますが、効果を最大限に引き出すためには、飼い主様が正しい知識を持ち、タイミングを守ることが大切です。
今回は、犬のワクチンの種類や接種スケジュールについて詳しく解説します。
ワクチンは、感染症を予防するために病原体の毒性を無くしたり弱めたりして作られた製剤です。
ワクチンを接種すると、犬の体にあらかじめ免疫が作られます。その結果、もし病原体が体内に侵入しても、すぐにそれを撃退できるようになり、病気の発症を防ぐことができます。
また、ワクチン接種は愛犬を感染症から守るだけでなく、周りの犬や猫たち、地域の動物たちの健康を守る役割も果たします。
また、狂犬病やレプトスピラ感染症など、動物から人へ感染する「動物由来感染症」から飼い主様たちを守ることにもつながります。
多くの犬が予防接種を受けることで、これらの感染症が広がるリスクを抑えることができます。
犬のワクチンには、法律で接種が義務付けられている「狂犬病ワクチン」と、任意で接種する「混合ワクチン」の2種類があります。混合ワクチンにはいくつかの種類があり、それぞれ予防できる病気が異なるのが特徴です。
中でも「5種混合ワクチン」は、WSAVA(世界小動物獣医師会)によって「コアワクチン」として分類されています。コアワクチンとは、生活環境や地域に関係なく、全ての犬に接種が推奨されています。
当院では犬6種混合ワクチン、犬8種混合ワクチン、狂犬病ワクチンを取り扱っております。
ワクチンは種類によって予防できる病気が異なります。愛犬の生活環境や健康状態に合ったワクチンを選ぶ際の目安として、ぜひ以下の内容を参考にしてみてください。
混合ワクチンで予防できる病気について、それぞれの特徴をご紹介します。愛犬を感染症から守るために、どのような病気があるのか知っておきましょう。
この病気にかかると、激しい下痢や嘔吐、血便が見られ、元気がなくなったり、急激に衰弱したりします。
軽症の場合は数日で自然に回復することもありますが、特に幼犬では注意が必要です。過急性感染と呼ばれるケースでは、発症後24時間程度で命を落としてしまうこともあります。伝染力が非常に強く、死亡率の高い病気です。
感染初期には発熱や食欲不振、元気がなくなる、目やに、鼻水など、人の風邪に似た症状が見られます。しかし、病状が進行すると血便やけいれんなどの神経症状が現れ、致死率が高い危険な病気です。麻痺などの後遺症が残る場合もあります。
特徴的な症状として、肉球や鼻が硬くなる「ハードパッド」が見られることがあります。
・1型(犬伝染性肝炎)
軽い発熱や鼻水など風邪のような症状から始まりますが、進行すると嘔吐や40度前後の高熱、腹水の貯留、臓器の出血など深刻な症状を引き起こします。1歳未満の子犬が感染すると致死率が高くなることが知られています。全く症状を示さず突然死する場合もあります。また、回復期には角膜浮腫が原因で、目が青白く見える「ブルーアイ」と呼ばれる症状が現れることがあります。
・2型(犬伝染性喉頭気管炎)
「ケンネルコフ」とも呼ばれる病気で、短く乾いた咳が特徴です。症状が悪化すると肺炎に進行することがあり、他のウイルスや細菌と混合感染すると、さらに重症化することがあります。
犬アデノウイルス2型と同様に「ケンネルコフ」と呼ばれ、しつこい咳が続くのが特徴です。場合によっては肺炎を引き起こし、重症化することがあります。伝染力が強く、他のウイルスや細菌と混合感染すると、さらに症状が悪化することがあります。
特に子犬が感染しやすい病気で、嘔吐や下痢などの消化器症状を引き起こします。犬パルボウイルス感染症と混合感染すると、さらに重症化することがあります。
レプトスピラ感染症は、ネズミなどの野生動物によって媒介される病気で、人にも感染する可能性があるため注意が必要です。感染経路として、レプトスピラという細菌に感染したネズミなどの尿や、その尿で汚染された水や土を介して、皮膚や口から侵入することが挙げられます。
・イクテロヘモジー型(黄疸型)
食欲不振や嘔吐、下痢、歯肉からの出血などの症状が現れるほか、赤血球が破壊されることで黄疸や血尿(血色素尿)が見られることがあります。
・カニコーラ型(出血型)
元気がなくなり、食欲不振や激しい嘔吐、吐血、発熱、筋肉痛などが起こるのが特徴です。尿毒症の症状が見られることもあり、発症から2~3日以内に命を落とすこともあります。この型は「犬のチフス」とも呼ばれています。
・グリッポチフォーサ型、ポモナ型
これらの型は主に海外で発生することが多いとされています。
ワクチン接種のスケジュールは、子犬と成犬で異なります。愛犬に最適な時期を知り、健康を守るために計画的に進めましょう。
子犬は免疫力がまだ十分に発達していないため、生後6~16週頃の間に3~4週間の間隔を空けて、3回に分けてワクチン接種を行うことが推奨されています。
■接種スケジュール例
・1回目:生後8週齢まで
・2回目:生後12週齢
・3回目:生後16週齢
生後8週齢以降に、2回目と3回目の接種を行うのが理想です。
最後の接種が完了してから、約1週間後にようやく十分な免疫がつくと考えられています。それまでは感染リスクを避けるため、散歩や他の犬との接触を控えるよう心がけましょう。
成犬の場合は、1年ごとに1回の接種が推奨されています。ただし、使用するワクチンの種類や愛犬の体調、地域の感染状況などによって適切な接種間隔が異なるため、かかりつけの獣医師と相談してスケジュールを決めることが大切です。
どのワクチンを選ぶかは、愛犬の生活環境やライフスタイルによって異なります。
愛犬が完全に室内で生活している場合は、5種混合ワクチンまたは6種混合ワクチンが適しています。この2種類のワクチンは、基本的な感染症を予防するためのものです。
田んぼや森など、野生動物が多く生息している地域に行くことがある場合は、レプトスピラ感染症のリスクが高まります。
そのため、7種混合ワクチン、8種混合ワクチン、または10種混合ワクチンを選ぶ方が安心です。
感染症をしっかり予防するためには、定期的なワクチン接種がとても大切です。また、子犬と成犬では接種回数やスケジュールが異なるため、注意が必要です。
ワクチン接種の詳しいスケジュールや、高齢の犬への接種について疑問がある場合は、ぜひかかりつけの獣医師に相談してください。愛犬の体調や年齢に合わせて、最適なアドバイスをしてもらえます。
また、ワクチン接種後にアレルギー反応が現れることは稀ですが、命にかかわる場合もあるため注意が必要です。具体的な症状としては、顔の腫れや呼吸の乱れなどが挙げられます。
万が一、アレルギー反応が出てもすぐに獣医師が対応できるため、接種後は30分ほど院内で様子を見ることをおすすめします。
定期的なワクチン接種は、愛犬の健康を守るために欠かせない大切なケアです。愛犬が元気に過ごせるよう、スケジュールをしっかり確認して接種を進めていきましょう。
ワクチン接種についてのご相談やご予約は、いつでも当院までお気軽にご連絡ください。
神奈川県相模原市を中心に大切なご家族の診療を行う
かやま動物病院