2024年12月
子犬や子猫を迎え入れるとき、まず考えたいのがしつけの方法です。
これからの長い時間を一緒に過ごすために、子犬や子猫のうちにしっかりとしつけをすることがとても大切です。しつけがうまくいけば、これから先、愛犬や愛猫と一緒に、より快適で幸せな毎日を送ることができるでしょう。
今回は、子犬・子猫のしつけについて、基本的なポイントや注意点、そして具体的なトレーニング方法について詳しくご紹介します。
子犬や子猫を迎えたとき、その愛らしさに心を奪われて「しつけはまだ早いかな?」と思うこともあるかもしれません。
しかし、しつけは早い段階で始めることが、後々の生活をよりスムーズで楽しいものにするためにとても重要です。
たとえば、トイレの場所を覚えていなかったり、外出時に言うことを聞かなかったりすると、ちょっとした困りごとが増えてしまいます。今は可愛らしい仕草でも、成犬や成猫になれば、その行動が大きな問題に発展することもあります。
そのため、子犬や子猫のうちにしっかりとしつけをしておくことが、今後の快適で幸せな生活を送るためにとても重要です。
子犬にとって理想的なしつけの開始時期は、生後2〜3カ月を過ぎた頃からです。この時期から少しずつトレーニングを始めることで、将来の問題行動を防ぐことができます。
子犬とのコミュニケーションを大切にし、アイコンタクトをとる練習やおすわりや待てなどの基本的なトレーニングを褒めながら楽しく行うことで、自然と信頼関係が築かれます。
トイレトレーニングや社会化など、子犬に必要なトレーニングはたくさんありますが、信頼関係がしっかりと築かれることで、しつけ全般がスムーズに進み、飼い主様と愛犬の間により強い絆が生まれることになります。
子猫も、しつけを始める理想的な時期は生後2〜3カ月頃です。トイレの使い方や爪とぎをしてもよい場所を覚えさせるなど、生活の基本的なルールをこの時期から少しずつ教えることで、後々の問題行動を予防することができます。
ただし猫は犬とは違い、目をじっと見つめられると「挑戦」や「威嚇」と感じることがあります。猫と接する際には、直接見つめるのではなく、リラックスした状態で優しくまばたきをすることが大切です。
そうすることで、猫に安心感を与え、自然に信頼関係を築くことができるでしょう。
しつけを成功させるためには、まず犬や猫との信頼関係を築くことが最も重要です。
いきなり叱ることや、長時間のトレーニングを強いると、犬や猫にとって大きなストレスになりかねません。
まずは、短い時間でもいいので、褒めたり、遊んだりする時間を大切にしましょう。
犬や猫が「飼い主といると楽しい」と感じることで、信頼関係が自然と生まれ、その後のしつけもスムーズに進むようになります。
胸や背中、耳の付け根など、自分の口や足が届きにくい場所を触ってあげると、愛犬が喜ぶことが多いです。このようなスキンシップは、愛犬との絆を深めるためにも大切な時間になります。
犬や猫がうまくできないときに叱ってしまうと、トレーニング自体が嫌なものになり、飼い主に対しても不信感を抱くことがあります。
そこで、まずはできたときに褒めることを意識しましょう。小さなおやつや優しい言葉で「よくできたね!」と伝えることで、犬や猫は喜びを感じ、トレーニングが楽しい時間になります。
また、間違った行動をしたときには、叱るのではなく、あえて無視することが効果的です。そして、よい行動をしたときにしっかり褒めることで、犬や猫は「こうすれば褒めてもらえるんだ」と理解し、しつけがスムーズに進むでしょう。
ダメなことを叱るよりも、やってほしいこと(ルール)を具体的に教えてあげましょう。「何をしてはいけないか」ではなく、「どうすれば良いか」を教え、それができたらたくさん褒めるようにすると、犬はその行動を繰り返してくれるようになります。
例えば、犬が興奮しているときに「静かにしなさい」と感情的に叱るだけでは、犬は何をすれば良いのか理解できません。その代わり、犬が座るなどおとなしい行動をしたときに褒めてあげると、良い行動が自然と増えていきます。このとき、楽しいことやポジティブな感情と結びつけて伝えることが大切です。
子犬や子猫の集中力は短く、1日5分程度のトレーニングが理想的です。長時間続けると、飽きてしまったりストレスを感じたりすることがあるので、短い時間で切り上げることが大切です。何日も繰り返して少しずつ進める方が、結果的に効果が高まります。
また、その日にうまくいかなくても、何度も同じ指示を出したり、叱ったりするのは避けましょう。長い目で見て、ゆったりとした気持ちで接することで、犬や猫も楽しくしつけを受け入れてくれるようになります。
トレーニングは、犬や猫が飽きる前に終わらせるのが理想です。
例えば、お母さんは「ソファに乗ってもいい」と言うのに、お父さんは「ダメ」と言うような場合、犬は混乱してしまいます。同じように、名前の呼び方(「チョコ!」なのか「チョコちゃん!」なのか)、コマンドの言い方(「おすわり!」なのか「すわれ!」なのか「シット!」なのか)、入ってもいい場所・ダメな場所、教育方針など、ルールを統一することが重要です。
家族全員が同じルールで犬を導いていくことで、犬にとって誰もが頼れる存在になり、さらに信頼と尊敬を得ることができます。
犬の行動に対しては、良い行動をしたときも、間違った行動をしたときも、その場ですぐ対応することが大切です。タイミングが遅れると、犬がその行為と褒められたり叱られたりする理由を関連付けて理解するのが難しくなってしまいます。
良い行動をしたらすぐ褒め、間違った行動はすぐ止め、必要であればその場で注意をする。このようにタイミングよく対応することで、犬に正しいルールを伝えやすくなります。
困った行動のトラブルを解決するには、その行動に代わる選択肢を工夫してみましょう。たとえば、噛み癖がある場合は噛んでもいいおもちゃを与える、インターホンに吠えるときはおやつで気をそらすなどが効果的です。また、リードを引っ張る癖には反対方向に進むなど方向転換をして対応し、興奮しがちな子にはクールダウンの時間を設けることも役立ちます。
困った行動そのものをやめさせるのではなく、他の行動に注意を向けさせることで、自然とその行動から遠ざける方法も有効です。
基本となるトイレトレーニングと、お出かけや災害時に役立つクレートトレーニングについてご紹介します。
まず、愛犬や愛猫が落ち着いてトイレができる環境を整えましょう。寝床や食事場所の近く、または人が頻繁に通る場所は避け、体格よりも一回り大きなトイレを設置するのがポイントです。
猫の場合、砂の大きさに好みがありますが、一般的には細かい砂を好む猫が多いです。また、飼育頭数プラス1個のトイレを設置することも重要です。
地面の臭いを嗅ぎながらクルクル回ったり、ソワソワしたりしている様子が見られたら、すぐにトイレに連れていきましょう。トイレで成功したときには、たくさん褒めて、小さなおやつを与えるとよいでしょう。
失敗してしまっても叱るのではなく静かに無視し、すぐに掃除をすることが大切です。臭いが残るとその場所をトイレと認識してしまうことがあるため、しっかり掃除しましょう。
うまくいかないとき
もし他の場所でトイレをしてしまうことが頻繁にある場合、その場所をトイレだと勘違いしている可能性があります。
たとえば、カーペットなどがその対象であれば、一時的に撤去するのも一つの方法です。
また、トイレに排泄物の臭いを少し残しておくのも効果的です。ペットシーツにおしっこを少しつけておくことで、愛犬や愛猫がその場所をトイレだと認識しやすくなります。
どうしても外でしかトイレをしない場合、大雪や台風などの悪天候でも散歩に行かなければならず、愛犬が病気やケガで散歩に行けないときには大変な状況になります。
その対策として、愛犬がいつもトイレをするエリアの土や草を持ち帰り、トイレをさせたい場所に置く方法があります。また、人工芝を屋内に設置し、その下にトイレシートを敷く工夫も有効です。
こうした方法を試しながら、屋内でもトイレができる環境を整えてあげるとよいでしょう。
まずは、犬の体格より少し大きめのクレートを用意し、普段過ごす部屋に置いておきましょう。
何日かそのままにして、クレートが怖いものではないことを自然に覚えてもらいます。
おやつを使ってクレートに入るように誘導します。このとき、「ハウス」と号令をかけると、指示と行動が結びつきやすくなります。クレートに入ったら、たっぷり褒めてあげて、リラックスできるようにしてあげましょう。
毎日のご飯をクレートの中で与えるのも、クレートに慣れさせる効果的な方法です。
クレートの中で少し長く過ごせたら、追加でおやつをあげて「中にいると嬉しいことがある」と覚えさせます。
これを繰り返すことで、クレートの中でリラックスして過ごす時間を少しずつ延ばしていきましょう。
少し離れた場所からおやつやおもちゃをクレートに投げ入れ、「ハウス」と号令をかけます。中に入ったら、すぐに褒めてあげましょう。
クレートに入ることに慣れてきたら、おやつを投げるふりをして、号令だけでクレートに入る練習をしましょう。中に入ったら、しっかり褒めておやつを与えます。
出るときも、落ち着いた状態で号令をかけてから出すようにしましょう。玄関やクレートの出入りは、飼い主の許可があってからというルールを徹底することで、犬は「すべてが自分の自由になるわけではない」と理解しやすくなります。このルールは、ドアからの飛び出し事故を防ぐためにも役立ちます。
クレートの中でお座りや伏せをさせたり、飼い主が少し離れた場所から「ハウス」と号令を出したり、クレートの位置や向きを変えて練習を行いましょう。
これにより、どんな状況でもクレートに入ることができるようになります。
最後に、クレートの扉を閉める練習をします。焦らず、まずは半分だけ閉めたり、一瞬だけ閉めたりして、扉が閉まっても怖くないことを少しずつ覚えさせましょう。徐々に閉める時間を延ばしていくことで、クレートの中で安心して過ごせるようになります。
猫にクレートトレーニングを行うのは、犬と比べて少し難しいかもしれません。
猫は新しい環境や物に対して敏感なので、クレートに無理に入れようとすると逆効果になることがあります。そのため、猫にクレートを安心できる場所として自然に受け入れてもらうための工夫が必要です。
まず、クレートを猫が普段過ごす部屋に置き、扉を開けて自由に出入りできるようにしておきます。
クレートの中にお気に入りのブランケットやおもちゃを置くと、猫が自ら入ってくる可能性が高まります。
猫がクレートに入ったら、無理に閉めずにそのままリラックスできる環境を作ります。
おやつやご飯をクレート内で与えたり、猫が好む静かな場所にクレートを置いたりすることで、クレートを快適な場所だと感じさせましょう。
猫がクレートに慣れてきたら、少しずつ扉を閉める練習を始めます。最初は短い時間から始め、徐々に閉める時間を延ばしていきます。
この際も、猫がストレスを感じていないかをよく観察し、無理をさせないことが重要です。
しつけが思うように進まないと感じたら、まずは立ち止まってみましょう。
犬や猫のしつけは個体差があり、思った通りに進まないことも少なくありません。その際に大切なのは、焦らずにゆっくり進めることです。
犬との言葉によるコミュニケーションは難しいため、すぐに効果が出るわけではありません。そのため、根気強くゆっくりと教えることが大切です。
また、一度成功したとしても、それを継続して教え続けることで、良い行動を忘れさせないようにすることも重要です。
しつけの様子を動画に撮っておくと、後から見直して原因を探る手がかりになります。
もし動画を撮ったら、その映像を持ってぜひ当院にご相談ください。
行動学に詳しい獣医師が、飼い主様が気づかないポイントを見つけ出し、愛犬や愛猫に合った適切なアドバイスをさせていただきます。
しつけをしっかり行うことで、飼い主様も犬や猫も、より快適で楽しい毎日を送ることができます。
小さな頃から無理のない範囲で少しずつしつけを取り入れていくことが、成功への鍵です。愛犬や愛猫との絆を深め、穏やかな生活を築くために、日々のしつけを大切にしましょう。
神奈川県相模原市を中心に大切なご家族の診療を行う
かやま動物病院