2025年4月
日本は地震や台風、大雨など、自然災害が多い国です。愛犬や愛猫と暮らす飼い主様にとって、災害への備えは大切な家族を守るために欠かせません。
いざというときに困らないためにも、非常時の食料や生活用品の準備、避難所の確認など、日頃から備えておくことが大切です。
特に、犬や猫と一緒に避難できる避難所がどこにあるのか、事前に把握しておくと安心でしょう。
今回は、獣医師の視点から、災害発生前の準備や災害時に取るべき対応について詳しくご紹介します。大切な家族を守るために、今できる備えを一緒に確認していきましょう。
いざというときに慌てず対応できるよう、日頃からしっかり備えておきましょう。特に、フードや水、衛生用品などの必需品に加え、避難時に役立つグッズをそろえておくことが大切です。
災害時の生活に備えて、以下のものを準備しておきましょう。
通常のフードを7~10日分、可能であれば1か月分ほど備えておくと安心です。災害時は環境の変化によるストレスで食欲が落ちることがあるため、お気に入りのフードやおやつも一緒に用意しておきましょう。
また、「ローリングストック法」(普段使うフードを多めに購入し、古いものから消費して補充する方法)を取り入れると、鮮度を保ちながら無理なく備蓄できます。
特に、病院で処方された療法食を食べている場合や、食べ物の好みがはっきりしていて好き嫌いが多い場合は、注意しておきましょう。
愛犬や愛猫が1日に必要な水の量は、体重1kgあたり約50mlです。この量をもとに、最低1週間分以上の飲料水を確保しましょう。
犬や猫向けの保存水を用意するほか、水道水を容器に入れて保存する方法もあります。ただし、水道水は常温で約3日、冷蔵庫で約7日が保存の目安です。
(例)体重5kgの犬の場合:1日250ml × 7日分 = 約1.75Lの水が必要
避難時や避難生活では、トイレや衛生管理も重要です。以下のものを準備しておきましょう。
災害時は動物病院がすぐに利用できないことも考えられるため、薬が必要な場合は早めにかかりつけの病院に相談しておくと安心です。
また、避難先などでお薬が切れてしまった場合、かかりつけではない動物病院を受診することもあるかもしれません。そんなとき、薬の名前や量がわかるだけでも、診察を受けるうえで大きな助けになります。
避難時や避難先で愛犬・愛猫が安心して過ごせるよう、以下のアイテムを準備しましょう。
避難時に愛犬や愛猫が安心して身を隠せる場所として役立ちます。クレートやキャリーケースは普段から慣れさせておくことが大切です。いざというときにスムーズに使えるよう、日頃から練習しておきましょう。
特に犬の場合、避難時の混乱で逃げ出してしまうリスクがあります。リードやハーネスはしっかりとしたものを用意し、定期的に傷みがないか確認しましょう。
はぐれてしまったときのために、迷子札や連絡先を記載した首輪を準備しておきましょう。
また、愛犬や愛猫の写真を用意しておくと、避難先ではぐれてしまった場合でも探しやすくなります。
災害が発生すると、愛犬や愛猫も強い不安を感じ、パニックに陥ることがあります。そのため、飼い主様自身が落ち着いて行動することが大切です。
まずは、人の安全を確保したうえで、犬には速やかにリードを装着し、猫はキャリーケースに入れましょう。パニック状態の犬や猫は、驚いて逃げてしまうことがあるため、素早く安全な状態にすることが重要です。
そのうえで、状況に応じて次の対応を検討してください。
自宅が安全で、生活を続けられる場合は、愛犬や愛猫と一緒に自宅で避難生活を送る選択肢もあります。
在宅避難の場合でも、ライフラインが途絶える可能性があるため、十分な備蓄品を確保しておくことが重要です。
自治体の指定する避難所に愛犬や愛猫と一緒に避難する方法です。ただし、避難所によっては、飼い主様と動物が別々のスペースで過ごす場合もあるため、事前にルールを確認しておくことが大切です。
どちらの避難方法を選ぶかは、災害の規模や自治体の指示に従って判断しましょう。
避難所では、多くの人や動物が集まるため、愛犬や愛猫にとって強いストレスがかかることがあります。そのため、落ち着いて過ごせるようにする工夫が必要です。
また、避難生活が長引くと、環境の変化によるストレスで免疫力が低下し、病気にかかりやすくなることもあります。そのため、ワクチン接種やノミ・ダニ予防は日頃からしっかり行っておくことが大切です。
災害に備えるためには、日頃から愛犬や愛猫が避難生活に適応できるように準備しておくことが重要です。
避難時の移動や避難先での生活に備えて、キャリーケースやクレートに日常的に慣れさせておくと、避難時の負担を減らせます。普段からハウスとして使う習慣をつけておくのもおすすめです。
避難所では多くの人や動物が一緒に過ごすため、日頃のしつけが大切になります。
トイレトレーニングをして決められた場所で排泄できるようにしておくと、避難先でも安心です。
また、「待て」や「おすわり」などの基本的なしつけを身につけておくことで、落ち着いて過ごしやすくなります。
他の動物や人に対して攻撃的にならないよう、普段から社会性を養うことも大切です。他の動物と適度に触れ合う機会を作ることで、避難先でも落ち着いて過ごしやすくなります。
災害時に慌てないように、事前に必要な情報を整理しておきましょう。
自宅近くの避難所は犬や猫と同行避難が可能かどうか、事前に自治体へ確認しておきましょう。
また、以下の内容を準備しておくと、いざというときにスムーズに行動できます。
万が一、災害時に愛犬や愛猫とはぐれてしまった場合でも、マイクロチップが装着されていれば飼い主様の情報を確認することができます。
動物病院で装着可能なので、未装着の場合はぜひ相談してみてください。
また、すでに装着済みの場合は、登録情報が最新かどうか定期的に確認しましょう。
災害時は、飼い主様も不安や混乱に陥りやすいものですが、日頃の備えが愛犬や愛猫の安全を守る大切なカギになります。
いざというときに落ち着いて対応できるよう、持ち出し袋の中身を定期的に確認し、必要なものを見直す習慣をつけておきましょう。
また、避難先のルールを確認し、愛犬・愛猫が落ち着いて過ごせる環境を日頃から整えておきましょう。
「何を準備すればいいのか不安」「愛犬・愛猫に合った対策が知りたい」という場合は、ぜひ当院にご相談ください。災害時の不安を少しでも減らすために、今できる備えを一緒に進めていきましょう。
<参考文献>
人とペットの災害対策ガイドライン(環境省、平成30年3月発行)
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h3009a/a-1a.pdf
神奈川県相模原市を中心に大切なご家族の診療を行う
かやま動物病院