2024年05月
フィラリア症は、蚊を介して感染する恐ろしい寄生虫「フィラリア」によって引き起こされる病気です。心臓や肺の血管に寄生することで心臓病や呼吸障害を発症し、最悪の場合は死に至ることもあります。
しかし、適切な予防薬を投与することで予防ができる病気です。
今回は、フィラリア症の基本、予防方法、治療について詳しく解説していきます。
感染した犬の血を吸った蚊がフィラリアの幼虫を次に刺す犬に移すことで感染します。
幼虫は1mmほどの大きさですが、犬の体内に侵入して約30cmの成虫へと成長し、心臓や肺の血管に寄生し、繁殖を開始します。
温かい季節は蚊が活発になり、フィラリア症への感染リスクが大きく高まります。この時期には蚊に刺されないような予防策を講じるとともに、予防薬の定期的な投与を心掛けることが大切です。
幼虫の段階では予防薬で駆除できますが、成虫になると内服薬だけでは対処できなくなるため、注意が必要です。
フィラリア症は、初期段階ではほとんど症状が現れないため、気付かないうちに愛犬が感染している可能性があります。しかし、幼虫が成虫に成長すると、血液循環や呼吸器系に障害を引き起こし以下のような症状が現れます。
さらに病状が進行すると、フィラリアは肺動脈から心臓へと移動し、重度の三尖弁逆流(心臓の三尖弁が正常に閉鎖せず、血液が逆流してしまう状態)を引き起こし、以下の症状が見られます。
これらの症状は、心臓の機能低下による大静脈症候群(心臓の機能低下により、全身の血液循環が悪化した状態)であり、急死のリスクも伴います。
フィラリア症の診断にはさまざまな検査を組み合わせて行います。
聴診器を使って心臓や肺の音を聴き、異常な心音や呼吸音がないか確認します。
血液検査や検査キットを用いて抗原検査を行い、フィラリア症の感染の有無を確認します。顕微鏡で血液中のフィラリア幼虫を調べ、感染を確定します。
感染が確定した場合は、さらに詳細な検査が必要です。
フィラリア症は一度体内に感染すると完全に取り除くことが難しく、治療方法も病気の進行度によって異なり、慎重な対応が求められます。
一般的な治療方法は薬を使用した内科治療です。
症状が出ていない初期段階では、駆虫薬を長期投与することでフィラリアを少しずつ減らし、症状の悪化を防ぎます。
しかし、症状が顕著な場合は「吊り出し法」という手術で、心臓内に寄生しているフィラリアを直接取り除きます。
フィラリア感染を防ぐためには予防が最も効果的であり、動物病院から処方された駆虫薬を毎月1回忘れずに投与しましょう。予防薬の投与期間は地域により異なるため、かかりつけの動物病院に確認してください。
当院では錠剤タイプ、チュアブルタイプ、スポットタイプ、注射タイプ(12ヶ月持続)等、投与のしやすさやコスト等から選択できます。
またフィラリア単剤だけでなく、フィラリア・ノミ・ダニ予防の合剤タイプも各種ご用意しております。
なお、予防薬を始める前には、必ず動物病院でフィラリア検査を受けましょう。 これは、すでに感染している場合、駆虫薬によって血中のフィラリア幼虫が一度に死滅することで、ショック状態になるリスクがあるためです。
もし愛犬がフィラリアに感染していた場合、獣医師と相談しながら適切な治療を受けましょう。
フィラリア症は重症化すると命の危険も伴うため、予防が非常に重要です。適切な予防薬を使用すれば、この病気を確実に防げますので、フィラリア症予防は毎年欠かさず行うことが大切です。
予防についての不安や質問があれば、どうぞ当院までお気軽にご相談ください。
神奈川県相模原市を中心に大切なご家族の診療を行う
かやま動物病院