2025年1月
近年、犬や猫の肥満が増えてきているのをご存じでしょうか?日本では、飼育されている犬の約半数、猫の約4割以上が肥満もしくは太り気味とされています。
肥満は単に見た目の問題だけではなく、健康や寿命にも大きく影響することがあるので注意が必要です。
今回は、犬や猫が肥満になる原因、そのリスク、そして予防法について詳しくお伝えします。
肥満は愛犬や愛猫に以下のような、さまざまな病気や不調のリスクをもたらします。
体重が増えることで関節に負担がかかり、痛みや炎症を引き起こしやすくなります。
ダックスフンドやウェルシュコーギー、トイプードル、フレンチブルドッグ、シーズーといった犬種は、椎間板ヘルニアが多く見られる傾向にあります。
これらの犬種では、体重が重くなりすぎると背骨に負担がかかりやすくなり、その結果、椎間板にも負担が集中しやすくなります。このため、椎間板ヘルニアのリスクが高まると考えられています。
肥満によってインスリンの働きが低下し、糖尿病のリスクが高まります。
過剰な体重が心臓に負担をかけ、心臓病のリスクを高めます。
肥満によって肺や気道に負担がかかるため、呼吸がしづらくなり、運動時に息切れを起こすことがあります。特に、短頭種の犬や猫は、こうした症状がより深刻になりやすいので、注意が必要です。
肥満は一部のがんのリスクも高めることが指摘されています。
猫の特発性膀胱炎(FLUTD)は肥満による運動不足や排尿頻度の減少が関連していると言われています。
このほか、急性膵炎、肝疾患、皮膚疾患など、多くの病気の原因となります。さらに肥満は健康だけでなく、愛犬や愛猫の生活の質にも悪影響を与えます。動きが鈍くなり、遊びや運動することが難しくなると活動量が減ってしまいます。その結果、体重がさらに増えてしまい、悪循環に陥ることが多くなります。
愛犬や愛猫が肥満になってしまう主な原因として、以下のようなことが考えられます。
必要以上にフードやおやつを与えてしまうと、体重が増えやすくなります。
十分な運動ができていないと、代謝が落ちてしまい、脂肪が蓄積されやすくなります。
ホルモンバランスの変化によって、食欲の増加や、代謝が低下して太りやすくなることがあります。
年齢を重ねると基礎代謝が低下し、肥満のリスクが高まります。
特に、ラブラドール・レトリバーやビーグル、ペルシャ猫などの特定の品種や、高齢の犬や猫は肥満になりやすい傾向があります。
これらの点を意識して、食事や運動をしっかり管理することが大切です。
犬の甲状腺機能低下症やクッシング症候群などの内分泌疾患があると、体重のコントロールが難しくなることがあります。
愛犬や愛猫の肥満を予防するには以下のポイントに気をつけましょう。
年齢や運動量に合わせたフードを選ぶことが大切です。
理想的な体重を基に、1日のカロリー摂取量を計算し、適切な量を守ることがポイントです。
おやつは1日の総カロリーの10%以内に抑えるのが理想的です。与えすぎには注意しましょう。
犬の場合は、1日2回の散歩を目安にしてみてください。猫にはおもちゃを使い、室内でも楽しみながら運動できる環境を整える工夫をするとよいでしょう。
月に1回程度、体重を測って記録しておくと、体重の変化に早く気づくことができます。定期的なチェックが肥満予防の鍵となります。
犬や猫の脇から胸(胸壁)に手を当て、肋骨が触れるかどうかで肥満度を判断します。手のひらを胸部に優しく当てて、前後に動かしてみましょう。
なんとなく最後の2~3本の肋骨が触れるくらいの肉付きが適正な状態です。もし指で探らないと肋骨が感じられない場合は、少し肥満気味かもしれません。
愛犬や愛猫が1日に必要なカロリーを計算するには、RER(安静時エネルギー要求量)とDER(維持エネルギー要求量)という方法があります。
RERは、犬や猫が安静にしているときに必要なカロリーを目安として算出します。
一方、DERは年齢や体重、性別、健康状態、そして活動量などを考慮して、愛犬や愛猫に合ったカロリーを推定します。
特に、よく動く子や妊娠中・授乳期の子は、DERが増えることがあります。ただし、DERはあくまで目安なので、健康状態や運動量に応じて調整が必要です。
RERを簡単に計算する方法があります。
RER = 70 × (体重(kg)の0.75乗)
電卓を使うと簡単です。体重を3回かけて、そこからルートをとり、70をかけると求められます。
例えば、体重5kgのトイプードルの場合、計算式は以下のようになります。
5 × 5 × 5 = √√ × 70 = 約234キロカロリー
DERは、RERに犬や猫の今の状態に合わせた活動係数を掛けることで計算します。
DER = RER × 活動係数
※計算で求めた数値は、あくまで「目安」です。
もし計算で求めた量を与えても体重が増えない場合は、その量を少し増やしてください。逆に計算した量を与えても体重が増えてしまう場合は、さらに減らす必要があります。不明な点があれば、いつでもご相談ください。
愛犬や愛猫がすでに肥満になってしまった場合、以下の方法で無理なく健康的な体重に戻していきましょう。
まずは獣医師に相談し、愛犬や愛猫に合ったダイエット用フードを選びましょう。
ダイエットフードは低カロリーでありながら、必要な栄養素をバランスよく含んでいるため、体重を減らしつつ健康を維持することができます。
1日の食事を小分けにして、少量ずつ与えることで満足感を得やすくなります。
また、食事の回数を増やすと、血糖値の急激な変動を防ぐことができます。
無理なく少しずつ運動量を増やしていくことが大切です。
犬の場合は、散歩の距離や時間を少しずつ延ばすとよいでしょう。また、猫の場合は、おもちゃを使って、遊びながら運動を促すことが効果的です。
また、楽しみながら運動することで、ストレスの軽減にもつながります。
水分をしっかり摂ることで、満腹感を得やすくなります。
また、水分が不足すると代謝が低下し、老廃物が体内に溜まりやすくなることもあります。特に、ダイエット用のウェットフードを取り入れると、カロリーを抑えつつ水分摂取量も増やせるため、ダイエットには効果的です。
さらに、腎臓の健康を守るためにも、十分な水分補給はとても大切です。
ただし、急激な減量は体に負担がかかるため危険です。健康的な減量のペースは、1週間で体重の1〜2%程度が目安です。
必ず獣医師のアドバイスを受けながら、無理のないダイエットを行いましょう。
愛犬や愛猫が肥満になると、健康にさまざまな問題を引き起こす可能性がありますが、適切なケアや対策を行うことで、予防や改善は十分に可能です。もし体重や体型について心配なことがあれば、ぜひ獣医師にご相談ください。
また、定期的な健康診断は、肥満だけでなく、他の健康問題の早期発見にも役立ちます。「うちの子は大丈夫」と思っていても、見えないところで肥満が進行している場合もあります。獣医師の詳しい診断を受けることで、愛犬や愛猫の健康状態をしっかり確認することができます。
愛犬や愛猫の健康に関する不安や疑問があれば、どうぞお気軽に当院までご相談ください。
神奈川県相模原市を中心に大切なご家族の診療を行う
かやま動物病院