2024年01月
胱炎は、犬と猫でよくみられる疾患の一つで、膀胱内で炎症が起こる状態を指します。
特に冬は飲水量が減るため、膀胱炎を発症する犬や猫が増える傾向にあります。実は放っておくと短期間で命に関わることもある怖い病気です。
今回は犬や猫の膀胱炎について、症状や治療方法、予防方法などを詳しく解説します。
犬では細菌感染による細菌性膀胱炎が多く、主に、糞便に関連した大腸菌、ブドウ球菌、レンサ球菌、パスツレラ菌などの細菌が原因菌として挙げられます。特にメス犬では、会陰部や消化器に存在する細菌が尿道口から侵入し、膀胱に到達してしまいます。
その理由としては尿道口が肛門の近くにあり、糞便中の細菌が尿道に入り込む可能性が高いことなどです。
加えて、オスに比べて尿道が短いために細菌が膀胱まで達しやすいこともメスで多い理由の1つです。
通常、尿が定期的に出ることにより、侵入してくる細菌は通常洗い流されますが、排尿回数が少ない、免疫力の低下、尿比重の低下、糖尿、尿道口が沢山の細菌に長くさらされている場合には感染しやすくなります。
一方猫では、特発性膀胱炎が多く、ストレス、飲水量の低下、トイレに行く回数の減少などの外的要因や、膀胱粘膜のバリアシステムの異常、ホルモンの変化などの内因要因が関係します。
その他には、慢性腎臓病により尿比重が薄くなってしまっていることや、尿石症、内分泌疾患、前立腺疾患、腫瘍などが原因となることもあります。
膀胱炎の主な症状には、頻尿、血尿、膿尿(細菌感染の場合)、排尿時の痛みや不快感などがあります。排尿の量が少なく、回数が多くなります。残尿感があるので排尿姿勢をしばしば取りますが、尿はほとんど出ません。
特に、膿尿や血尿がみられる場合、排尿時の苦痛から鳴き声が出たり、陰部を気にして舐めたりする行動がみられることもあります。
また悪化すると、腎臓まで菌が到達し腎盂腎炎を起こしたり、尿路結石の要因となったりします。急性の場合には発熱が見られることもあり、その他痛みによる食欲不振や元気消失などの症状もみられることがあります。
膀胱炎が疑われる場合は、尿検査、X線検査、エコー検査などを行います。
尿検査では、尿中の白血球や赤血球、細菌、結晶などの存在を確認し、X線検査では腎臓や膀胱、尿道などに結石がないか、腎臓や膀胱などの異常がないかを確認します。
また、エコー検査では、腎臓の大きさや形、膀胱の壁の厚さや、膀胱内に結石や腫瘍などがないか、前立腺の異常はないか、などを調べます。
膀胱炎の治療は原因によって異なり、治療が遅れると重症化する可能性があるので注意が必要です。
細菌感染が原因であれば抗生物質や消炎剤を服用しますが、尿路結石が原因であれば療法食を使って結石を溶かしたり、結石が大きい場合には手術で摘出したりします。
また、ストレスが原因であればストレスの元を取り除きつつ、消炎剤などを使った対症療法を行います。
薬剤の投与は最低2~3週間行います。膀胱炎は一見治ったように見えても、膀胱粘膜が完全に治るまでには時間がかかる病気です。そのため、通院時には再尿検査を行い、炎症がなくなったか確認する必要があります。再発予防の観点からも、炎症が無くなっていなければ、さらに投薬を継続します。
また、尿量を増加させる目的で大量の水分の投与(輸液)を行うこともあり、二次性の膀胱炎であれば原因疾患をはっきりさせた上でその治療も行います。
猫の特発性膀胱炎の場合、生活環境の変化等のストレスが原因の場合もあるので、リラックスする成分の入ったサプリメントや療法食を使用する場合もあります。その他にも当院では膀胱粘膜を補強する注射やサプリメントを提案する場合もあります。
尿の回数や、色を毎日チェックするようにしましょう。
特に猫の特発性膀胱炎では下記のような生活環境の整備が重要です。
「猫砂の変更」については、猫のトイレの環境は猫にとって非常に重要で、使っている猫砂の種類が快適でない場合、それがストレスにつながり、結果として膀胱の問題を引き起こすことがあります。
そのため、猫砂を変えてみることで、猫のストレスを軽減し、膀胱炎のリスクを低減させることに繋がる場合があります。
また、「底が見えないよう猫砂を沢山敷く」については、猫は本能的に排泄後に砂で覆い隠す行動をとりますが、トイレの底が見えると猫は砂で十分に覆い隠せないと感じ、これがストレスや不安を引き起こすことに繋がる可能性があるため対策が必要です。
犬では、オムツやマナーウェアを着用することで細菌性膀胱炎になりやすくなるので、オムツやマナーウェアは、汚れたらこまめに取り換えるようにしましょう。
長時間膀胱に尿が溜まることが無いように、十分に水を与え、きちんと散歩をさせ排尿させることが大切です。特に雌犬は外陰部が肛門の真下で汚染されやすく、発情中や妊娠中、出産後は特に清潔にするように心がけましょう。
犬、猫に共通する膀胱炎の予防方法としては、飲水量を増やし、排尿を我慢させないような工夫が重要です。
膀胱炎は悪化したり放置したりすると、さらに炎症が尿路を遡って慢性化したり、より重大な泌尿器病を起こすことになります。
膀胱炎は犬や猫でよくみられる病気ですが、ある程度予防が可能でもあります。愛犬や愛猫の日頃の様子をよく観察し、排尿に関して異常を感じた場合には、早目に動物病院を受診するようにしましょう。
この病気は再発しやすいので、一度かかったら特に注意して排尿の回数や尿の色を観察するようにしてください。
神奈川県相模原市を中心に大切なご家族の診療を行う
かやま動物病院