2025年6月
猫がタオルや毛布を前足でふみふみしたり、犬がお散歩中に穴掘りをしたりする様子を見かけることがありますよね。
実は、これらの行動には、野生で暮らしていた頃から受け継がれてきた本能的な理由があるのです。
可愛らしいだけではない、深い意味が込められていると知ると、ますます愛おしさが増すかもしれませんね。
そこで今回は、犬の穴掘りと猫のふみふみに隠された理由についてご紹介していきます。
猫が見せる「ふみふみ」というしぐさは、英語では「ミルクトレッド(milk tread)」や「ニーディング(kneading)」と呼ばれています。
この行動は、もともと子猫が母乳を飲むとき、母猫のお腹を前足でやさしく押して刺激する本能からきていると考えられています。
そのため、ふみふみはリラックスしているときや、飼い主様に甘えているとき、あるいはお気に入りのタオルの上などでよく見られます。
さらに、一部の研究では、猫の足の裏には分泌腺があり、ふみふみをすることで自分の匂いをつけ、縄張りを主張している可能性も指摘されています。
この行動は人と暮らしている猫だけでなく、ライオンやトラ、ジャガーなど野生の大型猫科動物にも見られるものです。
犬の穴掘り行動には、次のような様々な理由が考えられています。
もともと野生で暮らしていた犬やオオカミたちは、シカなどの大きな獲物を群れで狩り、食べきれなかった分を土に埋めて隠す習性がありました。
この行動の名残が、今の犬たちにも受け継がれていると考えられています。
また、犬は単独で狩りをすることもあり、土の中にいるネズミなどの小動物を捕まえるために穴を掘ることもありました。
犬科の動物はもともと巣穴を掘って生活する習性を持っています。
そのため、今でも寝床を作る名残として穴掘りをすることがあるのです。
さらに、地面を深く掘ると湿った冷たい土にたどり着くため、暑い夏の日には、体を冷やすために穴を掘ることもあります。
一方で、本能的な理由だけでなく、強いストレスや不安が原因で穴掘り行動を繰り返す場合もあります。
このような状態を「常同障害(じょうどうしょうがい)」と呼び、意味のない行動を何度も繰り返してしまう不安障害の一種とされています。
もし愛犬が落ち着きなく頻繁に穴を掘り続ける様子が見られる場合は、ストレスサインの可能性も考え、注意して見守ってあげましょう。
愛猫のふみふみや、愛犬の穴掘りなど、生まれつきの本能に根ざした行動は、できるだけ自由にさせてあげたいものですよね。
けれども、愛用のソファがボロボロになってしまったり、大切に育てた花壇が掘り返されてしまったりすると、飼い主様にとっては少し困った問題に感じることもあるかもしれません。
そのため、こうした行動が「問題行動」と見なされ、しつけの対象になってしまうこともあります。
しかし、本能的な行動を無理に抑え込むのではなく、愛犬や愛猫が安心して自然な行動を取れる環境を整えてあげることが大切です。
一方で、ストレスや常同障害が原因となり、本能行動が過剰になるケースもあります。
以下のような様子が見られた場合にはただ見守るだけではなく、行動をやさしく止め、早めに動物病院へ相談することをおすすめします。
愛犬や愛猫が本能的な行動をストレスなく発揮できるように、次のような環境作りを試してみてはいかがでしょうか。
犬や猫が自由に過ごしながら、飼い主様も安心できる環境を整えることがポイントです。
クッションやふとん、毛足の長いカーペットなど、柔らかくふわふわした場所を好んでふみふみすることが多いです。
そのため、愛猫が安心できるお気に入りの場所に、好みの素材のものを置いてあげるとよいでしょう。
また、飼い主様の膝の上でふみふみを始めた場合は、そっと見守ってあげるのが理想的です。
撫でている最中にふみふみし始めたときには、そのままやさしく撫で続けてあげると、より安心して満足してくれます。
愛犬には、自由に掘ってもよい専用の砂場を用意してあげましょう。
犬の目の前でおもちゃを砂に埋め、それを掘り出せたらたくさん褒めてあげると、そこが楽しい遊び場だと覚えてくれます。
室内で遊ばせる場合は、破れてもよいタオルを使うのがおすすめです。
飼い主様がタオルを掘る真似をして見せたり、タオルの中におもちゃを隠したりすることで、犬の本能を満たすことができます。
なお、ストレスから穴掘り行動をしている場合には、生活環境を見直すことも大切です。
また、穴掘り以外にも、ボール遊びや引っ張りっこなどの楽しい遊びを取り入れて、気分転換させてあげましょう。
愛猫のふみふみや、愛犬の穴掘りなど、日常でよく見かける行動には、それぞれ大切な本能が隠れています。
こうした行動を理解してあげることは、愛犬や愛猫の気持ちを知り、絆を深める大きな助けになります。
一方で、同じ行動を極端に繰り返す場合や、人が困ってしまうような行動が見られるときには、問題行動としてしつけや環境づくりを考える必要も出てきます。
その際は、愛犬・愛猫の気持ちに寄り添いながら、やさしくサポートしてあげましょう。
もし、日頃の行動で気になることや不安なことがありましたら、どうぞお気軽に当院までご相談ください。
神奈川県相模原市を中心に大切なご家族の診療を行う
かやま動物病院