2025年1月
爪切りは愛犬や愛猫の健康を守るために欠かせないケアのひとつです。しかし、「どのくらい切ればいいのかわからない」「嫌がって暴れるから難しい」と感じている飼い主様も多いのではないでしょうか。
定期的に爪を切ることで、犬や猫だけでなく飼い主様のケガも防ぐことができます。
今回は、自宅で爪を切る際のコツや注意点について詳しくご紹介します。
犬や猫の爪の中心部には血管や神経が通っており、これを「クイック」と呼びます。爪が伸びすぎると折れた際に多量の出血や痛みを伴い、場合によっては感染が進行して化膿してしまう恐れがあります。
また、爪は放っておくと弧を描くように伸びていき、肉球に刺さることでケガや炎症を引き起こすこともあります。このようなトラブルを防ぐためにも、定期的な爪切りが欠かせません。
また、爪の伸び方を観察することで、愛犬や愛猫の関節炎など、歩行状態に異常がないか確認することができます。
たとえば、外側と内側の削れ具合に差があったり、左右の爪の伸び方に違いが出たりする場合があります。
特に猫では、関節炎があると爪とぎの頻度が減ることが多く、その結果、爪が太くなったり、巻き爪のように肉球に刺さりやすくなることもあります。
日頃から爪の状態を観察することで、健康に関する重要な情報を得ることができるのです。
爪切りは、基本的には月に1回程度が目安です。ただし、犬や猫の生活習慣によって爪の伸び方が異なるため、個々の状況に合わせて調整しましょう。
散歩をよくする犬は、アスファルトや地面と爪が擦れることで自然に短くなることがあります。
それでも、すべての爪が削れるわけではないため、小指の爪や狼爪(ろうそう:親指にあたる部分の爪)は特に注意が必要です。
猫は爪とぎを通じて古い爪を剥がし、適切な長さを保つことができます。ただし、爪とぎの頻度や習慣には個体差があるため、伸びすぎていないか定期的に確認しましょう。
高齢の猫や爪とぎをあまりしない猫は特に注意が必要です。
愛犬や愛猫の爪を安全に切るためには、適切な爪切り器具を選ぶことが重要です。それぞれの器具には特徴があり、飼い主様の使いやすさや愛犬や愛猫に合わせた選択がポイントです。
切れ味が良く、短時間で爪をカットできます。
メリット: 硬い爪も切りやすい
デメリット: 爪の根元が見えにくいため、慣れが必要
ハサミのように使えるため、初心者でも扱いやすいコンパクトなタイプです。
メリット: 子犬や子猫、小型犬・猫に最適
デメリット: 成犬や成猫の硬い爪には不向き
爪の根元が見えやすく、正確にカットできるタイプです。
メリット: 初心者でも扱いやすい
デメリット: 力が足りないと爪が割れる可能性がある
巻き爪や狼爪のカットに特化したタイプです。
メリット: 狙いをつけて切りやすい
デメリット: 特殊な形状のため、一般的な爪切りには不向き
小型犬ではニッパータイプまたはギロチンタイプがおすすめです。中型~大型犬の爪は太くて硬いため、ギロチンタイプを使用しましょう。
ハサミタイプやギロチンタイプがおすすめです。
ハサミタイプは扱いやすく、子猫の爪も切ることができます。ギロチンタイプは素早く切れますが、扱いに慣れるまで慎重に行う必要があります。
人用の爪切りは平らな爪を切るために作られているため、犬や猫の丸い爪には適していません。
人用の爪切りを使用すると、カット時に爪が割れたり裂けたりすることがあり、爪が傷ついてしまいます。さらに、これにより痛みを伴う場合もあるため、犬や猫にとってストレスとなる可能性があります。
また、人用爪切りでは爪を切る際に必要以上の力が加わりやすく、犬や猫の指先や爪に負担をかけてしまうことがあります。これが原因で爪切りが嫌いになってしまうケースも少なくありません。
こうした問題を防ぐためには、人用の爪切りではなく、犬や猫専用に設計された動物用の爪切りを使用することが大切です。
スムーズかつ安全に爪を切るための準備や基本的な手順についてご説明します。
爪切りを始める前に必要な道具を揃え、愛犬や愛猫が落ち着ける環境を整えましょう。
爪切り、おもちゃやおやつ、万が一の出血に備えた止血用のガーゼやコットンを用意します。
じっとしやすい落ち着いた場所で行うのが理想的です。なるべく静かな環境で、愛犬や愛猫のストレスを軽減しましょう。
犬の場合、シャンプー後は爪が柔らかくなり、切りやすくなります。このタイミングを活用するのもおすすめです。
正しい長さと安全に切るためのポイントを押さえておきましょう。
爪の理想的な長さは、先端が床につかない程度です。室内で歩いた際に爪が床に当たり「カチカチ」という音がする場合、爪が長くなっている可能性があります。
爪を横から見ると、血管が通っている部分がピンク色に見えます。この血管の数ミリ手前まで切るようにしましょう。
爪が黒くて血管が確認できない場合は、先端から少しずつ切り、中心部が半透明に変わったら切るのをやめます。
犬と猫では爪の形や性格に違いがあるため、それぞれに合った方法で行います。
四つん這いの姿勢で立たせ、爪を切る足を軽く折り曲げて持ち上げ、肉球が天井に向くようにします。爪の角を削るように少しずつカットすると安全です。
一気に切ろうとすると誤って深爪してしまうことがあるため、慎重に進めることが大切です。
猫を後ろから優しく抱きかかえ、体全体が安定するように支えます。
爪を切る足を親指と人差し指で上下から軽く挟むように持ち、力を入れすぎずに優しく触れることがポイントです。
肉球を軽く押すと爪が自然に出てくるため、爪の先端で細くなっている部分を確認し、一度で切り落とします。
猫は長時間押さえつけられることを嫌がるため、短時間で終わらせるように心がけましょう。
爪切りに慣れていない犬や猫の場合は、無理をせず短い時間で少しずつ進めるのが理想です。すべての爪を一度に切ろうとせず、1~2本切れたら一旦中断してリラックスさせるのも良い方法です。爪切りが苦手な場合でも、少しずつ慣れてくることで、次第にスムーズにケアできるようになるでしょう。
爪切りに不安がある場合や出血してしまうことが心配な場合は、動物病院やトリマーに相談するのも一つの方法です。
愛犬や愛猫の爪切りは嫌がったり暴れたりすることも多く、なかなかスムーズにいかない場合があります。ここでは、よくある悩みやトラブルへの対処法をご紹介します。
すべての爪を一度に切る必要はありません。1~2本切れたら、暴れる前に中断しておやつなどのごほうびをあげ、少し休憩しましょう。
このように短時間で少しずつ切ることで、犬や猫の負担を減らせます。
猫の場合は、洗濯ネットやバスタオルで体を包み、切りたい足だけを出してケアをすると落ち着くことがあります。目の粗い洗濯ネットですと、そのまま穴から爪だけ出して切れるので安全に切ることもできます。
特に爪切りに慣れていない猫には試してみてください。
もし深爪してしまい出血がある場合には、清潔なコットンやガーゼで1~2分ほど圧迫して止血を試みます。市販の止血剤を使うのも効果的です。
ただし、動物が止血を嫌がって暴れる場合には無理をせず、まずは安静にして落ち着かせましょう。
出血が続く場合や腫れが見られるときは、動物病院での診察をおすすめします。
爪が折れた際に出血がある場合は、清潔なガーゼなどで圧迫して止血します。折れた後、新しい爪が正常に生えないことや曲がって生えてくる場合もあるため、経過をよく観察してください。
また、爪が中途半端に折れてぷらぷらと残っている場合は、痛みが続いてしまうことがあるため、早めに動物病院で適切な処置を受けるようにしましょう。
犬や猫は足先や爪をしっかり見せてくれないことも多いですが、無理に触るとさらに嫌がることがあります。どうしても確認が難しい場合や心配な点がある場合には、動物病院に相談すると安心です。
爪切りは愛犬や愛猫の健康管理の一環ですが、無理をして嫌がられると次回以降がさらに難しくなることがあります。焦らず、少しずつ慣らしていくことが大切です。
トラブルが続く場合は、トリマーや動物病院に相談してみましょう。
自宅での爪切りは、犬や猫にとって恐怖またはストレスに感じる場合があります。そのため、一度にすべての爪を切ろうとせず、少しずつ進めることが大切です。少しでも爪を切ることができたら、たくさん褒めてあげたり、好きなおやつを与えたりして、ポジティブな体験として記憶させましょう。
「爪切り=痛い、怖い」とならないよう、飼い主様の穏やかな対応が大切です。また、どうしてもうまくいかない場合や不安がある場合は、無理をせずに動物病院やトリミングサロンに相談してください。プロの手を借りることで、安全にケアが行えます。爪切りなどのケアだけでも対応してくれる動物病院も多数あります。
愛犬や愛猫が快適に暮らせるよう、焦らずゆっくりと爪切りに慣れていきましょう。
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