2024年09月
飼い主様から「どのフードを選べばいいか分からない」というご質問は、当院でもよく寄せられます。
栄養面では、年齢に合った総合栄養食を選んでいただければ基本的には問題ありませんが、総合栄養食にも、水分量や原材料、犬種・猫種別の成分、価格などさまざまな種類があり、迷ってしまうことも多いですよね。
今回は、フードの種類や選び方について詳しく解説します。
基本的なフードの種類を、水分の含有量ごとに解説します。
水分量が3〜11%のいわゆる「カリカリ」タイプです。
常温で長期保存ができるので手軽に使用することができます。また、グラムあたりのカロリーが高いため、1回の食事量が少なく、保存スペースも取りません。
ただし、水をあまり飲まない子の場合、水分不足になることがあります。
調理時に油で揚げているため、開封後に時間が経つと油が酸化し、これが健康トラブルの原因となることがあります。
水分量は72〜85%の缶詰やパウチタイプです。
嗜好性が高く、食事から水分を摂取できるのが大きなメリットですが、価格がやや高いものが多いです。
缶詰タイプは密閉後に高温で煮沸消毒されているため、添加物が少なく、開封前は常温保存ができますが、開封後は冷蔵保存が必要です。
また水分量が多く粘性が高い為に歯に残りやすく、結果的に歯石がつきやすくなります。そのため、食後の歯磨きはかかせません。
水分量は25〜35%で、ドライフードとウェットフードの中間のタイプです。
ドライフードのように常温保存が可能なものが多いですが、水分量が多いため、添加物が多めに含まれていることがあります。
飼い主様が自宅で手作りするフードです。
材料が見えて、添加物なしで作れるので安心感がありますが、栄養バランスを取るのが難しく、気軽に始めるにはハードルが高い方法です。
ペットフードには総合栄養食、間食、療法食、その他の目的食がありますが、主食として与える場合は必ず総合栄養食を選んでください。
総合栄養食は、水とそれだけで必要な栄養が取れるように設計されています。総合栄養食以外のフードだけを与え続けると、栄養バランスが偏ってしまうことがあります。
動物も人間と同じように、年齢によって必要な栄養バランスが異なるため、年齢に合わせたフードを選ぶことが重要です。
また、同じ年齢でも個体差があるため、健康状態に合わせたフードを選ぶことも大切です。
病気の治療や予防のために、獣医師が療法食を処方することもあります。
療法食はネットやホームセンターでも購入ができますが、自己判断で与えたり中断したりすると、健康に悪影響を与えてしまうことがあるので、療法食は必ず獣医師の指示に従って与えてください。
メーカーがきちんと研究開発をしているかどうか、ホームページなどで確認しましょう。また、品質や衛生管理にしっかり取り組んでいるかも重要です。製造工場が国際規格(ISO、BRC、SQFなど)を取得していると、さらに安心です。
逆に、原材料ばかりを強調したり、誤解を招くような説明をしているメーカーには気をつけましょう。
フードのパッケージに記載されている「原材料名」を確認しましょう。
原材料名は含有量の多い順に表記されています。犬は肉食寄りの雑食であり、猫は肉食なので、原材料の2番目までにタンパク質が表記されているものが高品質と言えます。
また、添加物も注意して確認する必要があり、「用途名(添加物名)」で表記されています。
添加物の中には、保存のために必要な保存料や酸化防止剤などもあれば、甘味料、着色料、香料など必要でないものも含まれています。
特に「着色料」には注意が必要です。犬は色で食欲が左右されることはなく、着色料にはメリットがありません。また、グルコサミンやオリゴ糖なども添加物に含まれますので、一概に添加物が入っていないものが良いとは言えませんが、犬や猫によっては健康被害が出ていることもありますので、添加物が多く含まれているものは避けた方が良いかもしれません。
犬や猫の中には、アレルギー体質の子もいて、特定の食材を食べると皮膚に炎症が起きたり、お腹を下してしまったりすることがあります。
そのため、アレルギーが疑われる場合やアレルギー検査で引っかかった成分が含まれているフードは避けるようにしましょう。
原材料(食材)をメモなどで記録しておくと、どの食材が愛犬や愛猫の体調に影響を与えているか比較しやすくなります。たとえば、特定の食材が入っていると皮膚やお腹の調子が悪くなる、逆に入っていないと調子が良いなど、食材との関連を把握することができます。
また、病気によってはタンパク質量や脂質の量など、食事制限が必要な場合もありますので、その際は必ず獣医師にご相談ください。
「国産」「プレミアムフード」「無添加」「手作り」「○○だから安心」といった言葉には注意が必要です。これらのフレーズが、フードの品質を直接保証するものではありません。
たとえば、プレミアムフードとされる多くの製品は厳選された原材料を使用していますが、それだけで必ずしも良質とは限りません。特定の栄養素が過剰に含まれている場合や、研究開発が不透明な製品も存在します。また、「無添加」であっても必ずしも安全というわけではなく、ビタミンやミネラルが添加されていることもあります。
どんなに良質なフードでも、愛犬や愛猫が食べてくれなければ意味がありません。空腹時には、好みでないごはんでも口にすることがあるかもしれませんが、長続きしないこともあります。
フードを変更した際には、適量をしっかり食べているか、体重に大きな増減がないかをチェックしてあげてください。
フードのパッケージに記載されている保存方法に従って保存しましょう。賞味期限は、指示された保存方法で保管された“未開封”のフードに対するものです。
開封後は、ドライフードやセミドライフードなら常温で1ヶ月以内に使い切るようにしましょう。ウェットフードの場合は、冷蔵保存で2日以内に使い切ることが望ましいです。また、「常温」と表記されていても、夏の暑い日などは冷蔵保存をお勧めします。
ただし、ドライフードは冷蔵庫で保存すると結露からカビが生える可能性があるため、冷蔵庫は避けて冷暗所で保存しましょう。
また保存容器によって、フードの品質は大きく変わります。ドライフードを長持ちさせるためには、空気や湿気、光に触れさせないことが重要です。フードを容器に移す際には、密閉性や遮光性の高い容器を選ぶようにしましょう。
フードに表記されている体重に従って与えてください。
ただし、表記されている量はあくまで目安なので、同じ量を食べても痩せてしまう子もいれば、太ってしまう子もいます。体型を確認しながら、量を調節しましょう。
表記されている量は1日の量ですので、子犬や子猫の場合は1日2〜3回に、成犬・成猫の場合は1〜2回に分けて与えましょう。
また、ダイエット中の場合は、与える量を現在の体重ではなく目標体重に合わせるようにしてください。
フードを今のものから別のものに切り替える場合は、現在のフードに少量の新しいフードを混ぜ、徐々に量を増やしていきましょう。食いつきやお腹の具合が悪くならないかを確認しながら進めることが大切です。
急に新しいフードに変えると、お腹を壊してしまうことがありますので、注意が必要です。
ペットフードにはさまざまな種類があり、「これが一番いい!」と断言できないのが難しいところです。どのフードがベストかは、愛犬や愛猫、そして飼い主様のライフスタイルによって異なります。
そのため、獣医師や動物病院のスタッフからアドバイスを受けて選ぶと安心です。当院でもいつでもご相談をお受けしていますので、お気軽にお声がけください。
神奈川県相模原市を中心に大切なご家族の診療を行う
かやま動物病院