2025年5月
「犬はどんな色の世界を見ているのだろう?」と気になったことはありませんか?
実は、犬の色彩感覚は人間とは大きく異なり、人間ほど鮮やかな色を認識できず、特に赤色はほとんど見えていないと言われています。
しかし、犬は青や黄色は比較的はっきりと見えるため、おもちゃやトレーニング用の道具を選ぶ際には、青や黄色のものを選ぶのがおすすめです。
そこで今回は、犬の色覚の仕組みや人間との違い、そして日常生活でどのような影響があるのかを解説します。
犬の目と人間の目には、実は大きな違いがあります。その中でも特に注目すべきは、色を感じ取る「錐体細胞(すいたいさいぼう)」の種類と数です。
人間の目には、赤・緑・青の3種類の錐体細胞が備わっており、豊かな色彩を見分けることができます。しかし、犬の目には青と黄緑の2種類しかないため、見える色の範囲は限られてしまいます。
この違いによって、犬は青や黄色をはっきりと認識することができますが、赤や緑といった色は別の色合いに見えています。
犬の視点から見た世界を、少し想像してみましょう。
私たちには鮮やかに見える赤いボールも、犬には灰色や茶色っぽく見えています。また、緑の芝生も、犬の目には薄い黄色や灰色に映っています。
このため、緑の芝生の上に赤いおもちゃを置くと背景と同化してしまい、犬には見つけにくくなってしまいます。
一方、青や黄色は犬にとって見分けやすい色です。特に、外での遊びやトレーニングの際には、青や黄色のおもちゃを使うと、犬の集中力や興味を引きやすくなります。
こうした色覚の違いを知っておくと、おもちゃやトレーニング道具を選ぶときに「犬が見つけやすいもの」を選ぶヒントになります。
犬の視覚は、色覚だけでなく、他の面でも人間と大きく異なります。
例えば、私たちが視力検査で「C」の形をしたランドルト環の向きを細かく判別できるのに対し、犬の場合は「見える」か「見えない」かの0か100かで判断します。そのため、一般的な視力検査では、犬の視力を正確に測ることは難しいです。
犬は焦点を合わせる能力が低く、人間で言うと近視気味で、人間の視力でいう0.2~0.3程度の視力しかないといわれています。
ボルゾイやアフガンハウンドなどサイトハウンド(視覚獣猟犬)と呼ばれる犬種は遠視気味で、遠くまで見渡せる非常に優れた視力を持っています。
しかし、視力が人間より劣っているからといって、犬の視覚が劣っているわけではありません。犬には、動くものを追いかける「動体視力」と、広範囲をカバーする「周辺視野の広さ」という大きな強みがあります。
例えば、おもちゃを投げたとき、犬が素早くそれに反応して追いかける姿を見たことがあるかもしれません。それは、犬の動体視力が非常に優れているからこそできることです。
また、周囲の動きにも敏感に反応するため、散歩中に小さな動物や車の動きにも素早く気づくことができます。
さらに、犬の目には「タペタム」という光を反射する層があり、暗闇でもわずかな光を利用して視界を確保できます。このため、夜や暗い場所でも人間より物を見やすくなっています。
これらの視覚の特性は、犬がもともと狩猟動物として進化してきた背景に深く関係しています。牧羊犬が素早く羊の動きを察知したり、狩猟犬が草むらの中で獲物を見逃さなかったりするのも、この優れた動体視力と広い視野のおかげです。
犬は、実は色覚よりも嗅覚や聴覚など、他の感覚を頼りにしています。色を見分けることよりも、動きや形、そして明暗の違いで物を認識することが得意なのです。
例えば、おもちゃを選ぶときも、私たちが鮮やかな色に目を引かれるのとは違い、犬は「形」や「動き」、「音」に注目しています。転がったり、音が鳴ったりするおもちゃは、犬にとって色以上に魅力的です。
このように犬の視覚や感覚の特性を知っておくことで、犬とのコミュニケーションや遊びをより楽しく、効果的にすることができます。
愛犬の視力が気になるとき、簡単にお家でチェックできる方法があります。普段の生活で「見えているのかな?」と感じたときに、ぜひ試してみてください。
まず、威嚇瞬き反応を確認してみましょう。愛犬の目の前に手や物をゆっくりと近づけて、目を瞑るかどうかを観察します。
ただし、風があたると目を閉じることがあるため、透明な板や窓越しに行うと、空気の動きを避けられて正確に判断できます。
次に、愛犬が動くものを目で追えているかを確認しましょう。お気に入りのおもちゃやボールを床で転がしたり、少し離れた場所でゆっくり動かしたりしてみてください。
もし、目で追うことが難しそうな場合や動きに反応しない場合は、視力に問題がある可能性があります。
さらに、愛犬の視野の広さもチェックしてみましょう。愛犬の横や後ろから、音を立てずに手を動かしてみて、気づくかどうかを観察します。
犬は広い周辺視野を持っているため、通常は小さな動きにも敏感に反応します。
これらのチェックはあくまで簡易的な方法です。「見えづらそう」「家具や壁にぶつかることが増えた」と感じたら、早めに獣医師に相談することが大切です。
特に、シニア犬や持病のある犬は、視力の変化が健康状態のサインであることもあります。愛犬の視力が少しでも心配なときは、どうぞ当院にご相談ください。
犬は私たちとは違った世界を見ています。特に赤色はほとんど認識できないため、遊びやコミュニケーションの際には、この違いを意識することが大切です。
また、犬の目の健康を守るためには、定期的な健康診断を受けることが大切です。
涙目や充血などの「いつもと違う」サインが見られたら、早めに動物病院で診てもらいましょう。特に、加齢による白内障などの眼疾患は、早期発見がとても重要です。
かやま動物病院では、犬の目の健康に関するご相談も承っています。目のトラブルは、放置すると悪化してしまうこともありますので、少しでも気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。
神奈川県相模原市を中心に大切なご家族の診療を行う
かやま動物病院