2023年10月
春から秋にかけてはマダニのシーズンです。春夏は成虫ダニですが、秋は、春から夏にかけて産卵され成長した若ダニや幼ダニが増え、接触のリスクがピークを迎えます。
犬や猫と生活している飼い主様は、注意が必要という話をよく聞くことでしょう。マダニが原因となる犬や猫の病気にはSFTS(重症熱性血小板減少症)やバベシア症、ライム病などが挙げられます。
今回の記事ではこれらの病気についてひとつひとつ解説していきます。
いずれの病気も、それぞれの病気の病原体を持っているマダニに咬まれることで発症します。
SFTSは、SFTSウイルスが原因で、バベシア症は血液中に寄生するバベシア原虫が原因で、ライム病はボレリアという細菌が原因になります。
SFTSに感染した犬や猫は発熱し、元気がなくなり、食欲も低下します。他にも、黄疸が出たり、下痢をしたりすることもあります。
SFTSに感染した、猫の約60%、犬の約40%が死亡します。
また、犬や猫を介して人にも感染する人獣共通感染症のため注意が必要で、人の死亡例も報告されています。
バベシア症の症状は、赤血球に感染して破壊されるため、溶血による貧血、黄疸などがおこります。尿の色が濃くなったり赤くなったりすることもあります。
ライム病の特徴的な症状は、関節炎です。関節炎に伴い足をひきずるなど歩行の異常が見られることもあります。急性腎不全もおこりやすく、突然尿が少なくなるという症状が出ることもあります。治療をしないまま放っておくと、心筋炎、心膜炎などを起こすこともあります。以前は海外で見られる病気でしたが、最近は、国内でも発症例が報告されています。
SFTS、バベシア症、ライム病の診断はそれぞれの病原体の存在をPCR検査や抗体検査などで行います。
マダニに咬まれたことがわかっていると、診断がよりスムーズに行われます。
治療方法は、いずれの病気も対症療法が中心です。現在、SFTSに対する特効薬はありません。バベシア症には治療薬があるため、対症療法に加えてこれらの治療薬を使用します。ライム病には抗生剤を使用します。
SFTS、バベシア症、ライム病などマダニが媒介する病気は、ノミダニ予防薬を使用することで感染のリスクを下げることができます。
(※)動物病院でマダニの予防薬を処方してもらいましょう。
現在、背中に塗布するスポットタイプや、飲み薬、おやつタイプなど、様々な種類の予防薬が動物病院で処方されています。ワンちゃん猫ちゃんの個体差や症状によってどの予防薬が一番適しているかが変わってくる事がありますので、詳しくは動物病院にお尋ねください。
予防の期間は、冬でも暖かい室内でマダニが生存している可能性があるため、春から秋だけでなく通年で行うと安心です。
万一マダニに犬や猫が咬まれた場合は、飼い主様自身で除去するのが難しいことも多いため、動物病院を受診するようにしましょう。
近年のアウトドアブームで、山林に連れていったペットたちが、都市部の家にマダニを運んでくることも増えているようです。マダニは、犬や猫では、顔、特に目の周り・耳、首、わきの下・指の間・肛門の周りなど、毛の少なめのところに寄生し、血を吸って大きく成長します。マダニが媒介する犬や猫の病気の中には、SFTSのように犬や猫から人に感染する可能性のあるものもあります。マダニ予防は、犬や猫だけのためではなく飼い主様自身の身を守るためにも重要です。
これからの秋シーズンは春と並ぶマダニのピークでもあるため、しっかりとマダニ予防をしておきましょう。
神奈川県相模原市を中心に大切なご家族の診療を行う
かやま動物病院