2026年1月
愛犬や愛猫がスヤスヤと気持ちよさそうに眠っている姿は、見ているだけで心が安らぎ、飼い主様にとっても至福の時間ではないでしょうか。
睡眠は、動物たちにとっても体力回復や脳の整理を行うための大切な時間です。
基本的には「よく寝る=健康」であることが多いのですが、中には「病気や老化のサイン」が隠れている場合も……。
そこで今回は、犬や猫の睡眠にまつわる雑学から、見逃してはいけない病気のサインまで、獣医師の視点で詳しく解説します。
「うちの犬/猫は1日中ずっと寝ている気がする」と感じたことはありますか?
それもそのはず、犬や猫は人間よりもはるかに長い睡眠時間を必要とします。
一般的に成犬の平均睡眠時間は12時間〜14時間、成猫の場合は14時間〜16時間と言われています。
1日の半分以上を寝て過ごす計算になりますが、これには狩猟本能の名残が深く関係しています。狩りをする動物にとって、獲物を捕らえる瞬間に全力を出すため、それ以外の時間は極力動かずに体力を温存する必要があったのです。
犬や猫の場合、睡眠時間の約80%が浅い眠り(レム睡眠)で、ぐっすり眠るノンレム睡眠はわずか20%程度しかありません。
これは、敵に襲われたり獲物が近づいたりした時に、すぐに飛び起きられるようにするための防衛本能です。
そのため、ちょっとした物音ですぐに目を開けたり、耳を動かしたりするのはごく自然なことで、短時間の深い眠りと長時間の浅い眠りを繰り返すのが彼らの正常なリズムなのです。
眠りの長さやパターンはライフステージによって変化します。年齢に合った睡眠スタイルを知っておくと、異常に気づきやすくなるでしょう。
生後間もない時期から成長期にかけては、1日のほとんど(18時間〜20時間近く)を寝て過ごします。
「寝る子は育つ」という言葉通り、眠っている間に成長ホルモンが分泌され、骨や筋肉、そして脳が急激に発達しているのです。
この時期は無理に起こさず、静かな環境でたっぷり寝かせてあげることが大切です。
ご家庭にお迎えしたばかりの子犬・子猫さんは、うれしさや楽しさからつい構いがちになりますが、寝るのも大事な仕事なので、疲れさせすぎないように短時間で遊んであげてください。
1歳を過ぎて体が大人になると、睡眠時間は平均的な長さに落ち着きます。
飼い主様の生活リズムに合わせて、夜にまとめて寝てくれるようになる子も多いでしょう。
ただし、猫は薄明薄暮性(明け方と夕暮れに活発になる習性)があるため、早朝や夕方に活動的になり、日中はひたすら寝ているというケースもよく見られます。
7歳〜10歳を超えシニア期に入ると、再び睡眠時間が長くなる傾向があります。
体力が落ちて疲れやすくなるため、体を休める時間が多くなるのです。
ここで注意したいのは「睡眠の質」と「リズム」の変化です。
ただ長く寝ているだけでなく、昼夜逆転や呼びかけへの無反応は、単なる加齢現象ではない可能性があります。詳しくは後半で解説していきます。
動物の寝相は性格や気温によっても左右されますが、その時の心理状態やリラックス度を表していることもあります。
「なんでそんな格好で?」と笑ってしまうようなポーズにも、実はちゃんと意味があるのです。
仰向けでお腹を丸出しにして寝る、いわゆる「へそ天」。
これは急所であるお腹を晒している状態であり、飼い主様や家の中に対して絶対的な安心感を抱いている証拠です。外敵の多い野性時代には考えない寝相ですよね。
また、室温が高く暑い時にも、お腹から熱を逃がすためにこのポーズをとることがあります。
猫が前足を胸の下に折りたたんで座る「香箱座り」は、リラックスしつつも、何かあればすぐに立ち上がれる体勢です。うとうとしている時によく見られます。
一方、寒い時期によく見る、体を丸めてアンモナイトのように円になる「アンモニャイト(ニャンモナイト)」は、体温を逃さないための工夫。この姿が見られたら、室温が少し肌寒いのかもしれません。
他にも……
危険が多い野良の場合はうつ伏せ、もしくは丸まった状態で寝ます。何かあったらすぐ行動に移すことができ、気を抜いていない状態です。
ただし仰向けで寝ないからといってガッカリする必要はありません。「野生の本能が残っていてカッコイイ」と言えるのですから!
寝ている最中に「クゥクゥ」と鳴いたり、走るように足をパタパタさせたりすることがありますよね。これは脳が活発に動いている「レム睡眠」の状態で、今日あった出来事を整理したり、夢の中で遊んだりしていると考えられています。感受性の高い子や、幼齢~若い子ほどよく夢を見るようです。
痙攣(けいれん)との見分けがつきにくい場合がありますが、名前を呼んで反応するか、すぐに収まるようであれば、そっと見守ってあげて良いでしょう。
「睡眠は健康のバロメーター」です。言葉を話せない犬や猫にとって、睡眠の変化は「痛み」や「苦しさ」を訴えるSOSである可能性があります。
以下のような変化が見られたら、動物病院への相談も検討してください。
急に睡眠時間が増え、遊ぶのを嫌がるようになった
夜になると落ち着きがなく、部屋をウロウロ歩き回る
寝起きが極端に悪く、「おやつを見せても反応が薄い」など日中もぼんやりしている
熟睡できず、短時間の睡眠を繰り返している
横になると呼吸が苦しそう、座ったまま寝ようとする
いびきが急に大きくなった
これらは単なる老化や気分の問題ではなく、関節の痛み、心臓病、腎臓病、ホルモン異常(甲状腺機能低下症など)などの不調が隠れている可能性があります。
また、気になった様子はスマートフォンで動画を撮影して見せていただくと、受診時の助けになります。
老犬・老猫で特に気をつけたいのが、認知不全症候群(認知症)による睡眠障害です。
「最近よく寝るようになったのは高齢のせいだからかな?」と見過ごしてしまいがちですが、認知症の初期症状として最も現れやすいのが睡眠サイクルの乱れなのです。
他にも以下のような症状が見られることがあります。
こうした行動は、脳の老化により不安感が強くなったり、自分が今どこにいるのか分からなくなったりすることで起こります。
飼い主様にとっても、夜鳴きや介護による睡眠不足は大きな負担となります。
認知症は早期発見・早期対応で進行を緩やかにすることも可能なので、飼い主様一人で抱え込まずに動物病院へ相談しましょう。
「愛犬・愛猫が夜寝てくれない」という悩みは、決して飼い主様のわがままではありません。
最近では、脳の血流を良くするサプリメントや、情緒を安定させるお薬、睡眠サイクルを整えるための治療法など、選択肢が増えています。
また、日中に太陽の光を浴びさせるなど、体に負担のかからない範囲で刺激を与えることで体内時計をリセットできる場合もあります。
「ただ疲れが溜まっているだけかも」「まだ認知症と決まったわけではないし……」と気後れせず、睡眠リズムの変化を感じたら、早い段階で動物病院へお越しください。
病気についてだけではなく、しつけや環境改善のコツをやさしくアドバイスいたします。
犬や猫にとって、睡眠は元気の源であり、心身のメンテナンスを行うための欠かせない時間です。
愛犬・愛猫が質の良い睡眠をとれるよう、寝床の環境を整えつつ、日々の変化を優しく見守ってあげてくださいね。
彼らの平均睡眠時間や年齢ごとの特徴を知っておくことで「いつもの愛らしい寝姿」と「病気のサイン」を見分けることができるようになります。
特にシニア期に入ってからの「睡眠の変化」は、認知症や内臓疾患の初期症状であるケースが少なくありません。
「最近、寝てばかりで様子がおかしいな」「夜中の行動が気になるな」と感じたら、ぜひ私たちにもご相談ください。
神奈川県相模原市を中心に大切なご家族の診療を行う
かやま動物病院