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犬・猫の皮膚にしこりやできものを発見したら「まず確かめる」が最善の理由

2026年2月

愛犬・愛猫を撫でているときにきづくしこりやふくらみ(イメージ)

愛犬や愛猫を撫でていてふと「あれ、こんなところにしこりがある」と気づいたことはありませんか?
あるいは毛並みを整えているときに、皮膚がうっすら盛り上がっていることに気づいて「大丈夫かな…」と心配になった方もいらっしゃるでしょう。 

体表のしこり・できもの(ふくらみ)の原因はさまざまで、良性のものも多くあります。
ただし、外見や触り心地だけで「良性か悪性か」を判断することは、獣医師にとっても難しいのが実際です。
「まだ小さいし、痛がっていないから」という自己判断が、気づきを遅らせることにつながるケースもあります。 

この記事では、獣医師の目線から、しこり・できものに関わる基本的な知識と、早期発見・早期受診の重要性と目安についてわかりやすく解説します。 

しこり・できものに気付いたら|体表腫瘤の代表的な種類と原因

獣医学では、皮膚や皮下組織に生じるしこり全般を「体表腫瘤(たいひょうしゅりゅう)」と呼びます。
「しこり・できもの=がん(悪性)」とは限らず、腫瘍性のものだけでなく、炎症・感染・嚢胞・虫刺され・外傷・アレルギー反応など、さまざまな原因がこれに含まれます。

ただし、「良性だから放置してよい」と言い切れないケースがあることも事実です。
原因やできた場所によって対応が異なるため、まず「何なのかを確かめること」が大切です。

<腫瘍性のできものと代表例>

腫瘍とは、細胞が異常に増殖してかたまりを形成したものです。良性と悪性があり、同じ見た目でも性質が大きく異なることがあります。  

以下は「腫瘍性のできもの」の代表例です。

脂肪腫

脂肪細胞が増えてできる柔らかいしこりで、中高齢の犬に多く見られます。皮膚の下でプニプニと動くことが多く、良性であることがほとんどです。
ただし、深部に及ぶものや急速に大きくなるものは、追加の評価が必要なことがあります。 

肥満細胞腫

悪性腫瘍のこともある腫瘍で、犬の皮膚腫瘍のなかで比較的よく見られる腫瘍のひとつです。
赤みやただれを伴うことがあり、一見すると虫刺されや湿疹に見えることもあります。
悪性の度合いにはばらつきがあるため、見た目や感触だけの判断が難しく、細胞診での確認が重要です。 

リンパ腫

悪性腫瘍で、リンパ組織に発生する腫瘍で、犬・猫ともに見られます
いわゆる「多中心型」タイプには、あご下・わきの下・脚の付け根などのリンパ節が腫れてしこりとして触れることがあります。
また「皮膚型」では、しこりや赤み・ただれとして皮膚に現れます。
しこり以外の症状では、元気がなくなり、食欲減退を伴うケースもあります。 

組織球性肉腫

悪性腫瘍で、犬に見られる悪性腫瘍のひとつで、バーニーズ・マウンテン・ドッグやフラット・コーテッド・レトリーバーなど特定の犬種での発生が知られています。
皮膚・皮下にしこりとして現れることもあれば、全身の臓器に関わるタイプもあります。
外見だけでは他の腫瘍との区別がつきにくいため、早期の検査が重要です。 

組織球腫

良性腫瘍で、主に若い犬(1〜2歳前後)に見られる腫瘍で、自然に消えることもあります。
ただし、見た目が似た別の腫瘍との区別が必要なため、検査による確認をおすすめしています。

乳頭腫(いぼ様のできもの)

ウイルスが関与するいぼで、若い犬や免疫が低下した動物に見られることがあります。口の周りや皮膚に複数できるケースもあります。 

<猫で注意したい腫瘍>

猫の皮下には、見た目は小さくても深部に広がっていたり再発しやすいタイプの腫瘍が生じることがあります。
代表的なものとして「線維肉腫」があります。線維肉腫は皮膚や皮下の結合組織に発生する悪性腫瘍で、猫に比較的多く見られます。

猫は体調の変化が外からわかりにくいことが多い動物です。しこりが小さく見えても皮膚の深部や筋肉層まで広がっているケースがあるため「小さそうだから」「まだ元気そうだ」という判断だけで様子を見続けるのは避けてください。 

見た目・触り心地だけでは良性/悪性は判断できない

飼い主様がもっとも気になるのは「これって良性?悪性?」という点でしょう。
しかし、皮膚のしこりを触診・視診だけで確定診断することは、獣医師にとっても難しいのです。細胞診や病理検査といった検査を行ってはじめて、しこりの正体がわかります。 

まず、サイズと悪性度は比例しません
小さくても悪性のものはありますし、大きくても良性のこともあります。「まだ小さいから大丈夫」という判断には注意が必要です。 

 また、「無痛=安全の証拠」ではない点にも注意が必要です。 
悪性腫瘍であっても、動物が痛みを見せないことは珍しくありません。初期の肥満細胞腫やリンパ腫では、見た目にはほとんど変化がなく、動物も普段どおりに過ごしていることがあります。 

とくに気を付けたいのが「以前から変わっていない」と感じるケースです。
実は最近できたものだったり、少しずつ変化していることに気づいていない場合があります。
写真や日付による記録があると、変化の把握に役立ちます。

すぐ受診を考えたい変化:見逃したくないサイン

図解:しこりがないかチェックしたい犬・猫の体の部位(顔の下・手足の付け根・お腹のあたり)

日頃から全身を優しく撫でる習慣をつけておくと異変に気づきやすくなります。とくに、しこりができやすいあご下・わきの下・脚の付け根・背中・おなかまわりは、スキンシップのついでに指の腹でそっと触れて確認してみてください。

以下のような変化が見られるときは、動物病院へのご相談をお勧めします。 

【しこりの変化】

  • 数日〜2週間程度で明らかに大きくなっている 

  • 形がいびつになってきた、表面がでこぼこしてきた

  • 赤みやただれ、出血、じゅくじゅくした状態がある 

  • かさぶたができて繰り返す
     

【数・場所の変化】

  • しこりが増えている、別の場所にも新しくできた 

  • あご下・わきの下・脚の付け根などのリンパ節が腫れている感じがする  
     

【全身の変化】

  • 同じ場所を繰り返し舐める・かじる行動が見られる 
  • 触ると嫌がる、痛がる様子がある
  • 元気がない、食欲が落ちた、体重が減っている

早めに原因を特定し、治療を開始することは、愛犬・愛猫にとっても飼い主様にとっても、心身両面での負担が少なくなることがほとんどです。

<早期発見・早期治療のメリット>

しこりに気づいていただいた時点で、動物病院に来ていただき、原因を特定することは大きな意味があります。検査の結果が良性であれば、安心した毎日につながります。
腫瘍が小さいうちに見つかれば手術の範囲が小さくて済むことが多く、治療の選択肢も広がりやすくなります。

また、しこりに限らず、定期的な健康診断(定期健診)の受診もお勧めしています。健診の場面でしこりの初期段階を発見するきっかけになることも少なくありません。

動物病院での検査の流れ|細胞診・病理検査で何がわかる?

「どんな検査をするのか」が事前にわかっていると、受診への不安が少し和らぐかもしれません。一般的な流れをご紹介します。

<問診・視診・触診>

いつ頃から気づいたか、大きさの変化、舐める・かく行動の有無などをお伺いします。その上で、しこりの位置・大きさ・硬さ・動きやすさなどを確認します。 

<細胞診(FNA:細い針を使う検査) >

細い針でしこりの細胞を採取し、顕微鏡で調べる検査です。
多くの場合、外来で短時間に行え、麻酔を必要としないケースが多いです。
「このしこりがどんな細胞でできているか」の方向性をつかむための重要なステップです。

画像検査>

必要に応じて超音波検査・レントゲン検査・CT検査などでしこりの深さや周囲への広がり、関連する臓器の状態を確認します。転移の有無を調べる際にも活用されます。

病理組織検査>

生検・切除後の検査として、しこりの一部または全体を取り出し、専門機関で詳しく調べる検査です。細胞診よりも精度が高く、腫瘍の種類・悪性度・切除が適切に行えたかどうかの確定診断に用いられます。 

これらの検査結果をもとに良性が確認できれば定期的な観察を、悪性が疑われれば切除手術や追加検査をご案内します。
当院では、診断内容・治療方針・考えられるリスクや副作用・費用・今後の見通しなど、大切なご家族の状態に関わる情報を、専門用語をできる限り避けたわかりやすい言葉でご説明することを大切にしています。
ご不明な点や心配なことがあれば、どんなことでもお気軽にお声がけください。

受診前にできること・気をつけたいこと

しこりを見つけたら飼い主様ができることとして、まずスマートフォンで写真を撮っておくことが挙げられます。その際、定規などを添えると大きさの変化がわかりやすくなります。

また、気づいた日付、触ったときの感触(柔らかい・硬い・動くかどうか)をぜひメモしておきましょう。「舐める」「かじる」などの行動の変化があればあわせて記録しておいてください。

いつからあったか」は意外と記憶があいまいになりやすいため、気づいた時点で記録しておくと、診察の際の大きな助けになります。 

【同じ場所を繰り返し舐めている場合】

繰り返し舐めたりかじったりする行動は、その部位に何らかの違和感があるサインのことがあります。
舐め続けると皮膚が傷つき、細菌が入って感染や炎症を起こすと状態が悪化することもあります。
エリザベスカラーなどで患部を保護しながら、早めにご相談いただくことをおすすめします。

 <避けていただきたいこと>

しこりを見つけると、「何かしてあげたい」という気持ちから、つい自己流のケアをしてしまう方もいらっしゃいます。しかし、以下のような行為は状態を悪化させることがあるため、ご注意ください。

しこりをつぶす・強く揉む

内容物が周囲の組織に広がったり、炎症や感染を引き起こすことがあります。「中身を出せば治るかも」という判断は避けてください。

自己判断で薬を塗る・飲ませる

市販の外用薬や人間用の薬が皮膚への刺激になることがあります。また、動物が塗り薬を舐めて体調を崩すケースもあります。受診前のケアはご遠慮いただき、まずご相談ください。

個体差があることを忘れない

SNSや個人のブログで見られる「同じようなしこりで大丈夫だった」という体験談は、あくまでも別の動物のケースです。しこりは見た目が似ていても、種類や性質がまったく異なることがあります。

かかりつけの獣医師であれば、その子の普段の様子や体質・経過といった背景をふまえて判断することができます。自己判断はせず、気になった際はぜひ一度ご相談ください。

まとめ|「早めに確かめる」ことが、より良い選択肢を守る 

体表のしこり・できものは良性のものも多い一方、外見や触り心地だけで安全性を判断することはできません。

大切なのは、気になることがあれば実際に動物病院へ足を運び、獣医師に直接診てもらうことです。実際に触れたり検査したりすることではじめてわかることがたくさんあります。
早めの受診が、その後の選択肢を広げることにつながります。

愛犬・愛猫の毎日のふれあいのなかで「なんとなく気になる」という段階でも、どうぞお気軽に当院にご相談ください。

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